医療あれこれ

老化に対する考え方で健康寿命が変わる

 老化に対する考え方の相違により健康に及ぼす影響が異なり、結果として実際の寿命が変化してくる可能性を示す疫学的研究が報告されています。具体的には老化を肯定的にとらえている人は、否定的にとらえている人より健康で長生きするというのです。

 論文はカナダのブリティッシュコロンビア大学とアメリカのハーバードT.H.チャン公衆衛生大学院に所属するEric Kim氏が上席著者としてAmerican Heart Association News 2022819日に公表されています。結果は老化に対する満足度が高い人は、低い人に比べて全死亡リスクが43%低いというものでした。さらに満足度が高い人では、糖尿病、脳卒中、ガン、心臓病などの慢性疾患リスクが低く、認知機能が優れていて、身体活動量が多い傾向にあり、睡眠障害が少ないことが判りました。このような人は仲間が多く、楽観的な性格で、強い目的意識を持っていたということです。

 さらに著者らは別の研究で、50歳以上で自分の老化に満足している人は健診受診率が高いことが示されています。逆に老化によって健康が障害されることは避けられないと考えている人は、老化を抑制する行動をしない、つまり健診を受けようとしない傾向があることを明らかにしています。

 それでは具体的に長生きするためにはどのような行動をとればいいのか、について著者らは以下のようなアドバイスをしています。

 まず第一に退職後にも目的意識を持ち続けることです。生活において価値観にあった計画を立てることを提案しています。例えば家族を大切にする人なら、孫の世話をするなど家族に貢献できるよう優先度を高くした計画をたてることを考えます。また環境問題に関心がある人なら、環境保全活動に参加するなどボランティア活動を優先した計画がよいといいます。

 次に重要なのは老化に対する否定的な観念を取り払うことです。何事にも肯定的に生活するのは簡単ではないかもしれませんが、適度な運動をするなど具体的にできることを心掛けてみるのは一つの方法と考えられます。

 また家族、友人など周囲の人たちとのつながりを大切にしたいものです。地域の集会などに積極的に参加してみてはいかがでしょうか。いくつになっても何か新しいことに挑戦してみるのはよいことだと思われます。