医療あれこれ

眼底検査で脳卒中のリスクを予測

 健康診断において眼科的に眼底の網膜や血管の状態を調べることは高血圧や糖尿病などによる血管障害の程度を評価するために重要です。そしてこれらの生活習慣病治療中の人は高血圧性網膜症や糖尿病性網膜症の発生を早期に把握するため定期的に眼底検査を受けることが勧められています。

 この度、国立循環器病研究センター健診部長の小久保喜弘氏らの調査研究から高血圧性網膜症をもつ人は、たとえその程度が軽度であっても脳血管障害発症のリスクは高いことが明らかとなりました。

(文献:Kokubo Y. et al J. Atheroscler. Thromb. Doi: 10.15551/jat63317)

 調査研究は、大阪府吹田市在住の人のうちこれまで特に循環器疾患にかかったことがない3070歳の男性3261名、女性3766名を対象としておこなわれました。これらの人は眼底所見で正常か軽度高血圧性網膜症でした。17年間という長期にわたって追跡調査がおこなわれ、脳卒中を発症した人は351例、心筋梗塞などの循環器疾患は247例の人で発症がみられました。年齢や性別、治療薬の使用、コレステロールなどの測定値、喫煙、飲酒などの生活習慣を調整して解析されました。

 その結果、たとえ軽度であっても高血圧性網膜症の所見がある人は、網膜症がなかった人に比べて脳卒中の発症リスクが28%も高いことが判りました。一方で循環器疾患については軽度網膜症の有無と統計的な関連はなかったそうです。また血圧が14090未満とほぼ正常で降圧薬を服用していない人でも、軽度の高血圧性眼底所見があると正常眼底の人に比べて脳卒中の発症リスクが48%も高いことも明らかにされました。

 以上の結果から小久保氏らは、軽度の高血圧性網膜症があることは、血圧や糖尿病などとは独立した脳卒中発症の危険因子であることがわかったこと、そして健康診断などで眼底検査を行うことは脳卒中リスクを予見するのに有用であると述べています。