医療あれこれ

血圧をさげる運動について

 日本人では約4,000万人の高血圧患者さんがいるとされていますが、これは日本人の3人に1人が高血圧ということになり、60歳以上になると2人に1人という割合になります。今さらと思われる方が多いと思いますが、今回は血圧をさげるのに有効な運動についての話題です。

適度の運動は血管が拡張し体の血流がよくなり酸素を取り入れる能力が高まることで心臓の負担を減らします。さらに運動は血圧を上げるホルモンの分泌量を減らします。またLDLとして知られる悪玉コレステロールの減少、中性脂肪の減少、血糖値の低下など血圧以外の効果もあります。特に足を使った有酸素運動は血圧をさげるのに非常に有用です。日常生活の中で歩くことを意識するだけで有酸素運動としての効果があり、食後の散歩は特に効果的です。

それではどの程度の運動が効果的なのかというと、一日の合計で30分以上の運動を目標にします。定期的にできれば毎日30分以上の運動をしてください。一回で30分の運動をするのは時間的に難しい人は、10分以上の運動を合計3回以上することによって一日30分と計算しても大丈夫です。毎日続けることが大切なのです。

もう一つのポイントは激しすぎない運動をめざすことです。軽いあるいは中等度の運動では血圧の上昇はわずかであるのに対して、強度の高い運動は血圧上昇がおこりやすいといわれています。運動することが大切といっても、高強度の運動を続けると逆に血圧が上がってしまうことになります。中等度つまり、ややきついと感じる程度の運動が効果的です。具体的に中等度の運動は心拍数つまり脈拍が1分間あたり100120回で少し息が上がる程度の運動とされています。しかしたとえ中等度の運動だったとしても、いきなり走ると体に負担がかかることがあります。血圧が急に高くなったり、脳出血や心臓病などの病気を引き起こしてしまう危険性もあります。できれば日常生活の中で、例えば通勤や掃除、洗濯、自転車で買い物に行くなど常に体を動かす意識をもつことから始めることがすすめられます。例えば公共交通機関を使って通勤するときに、目的地より一つ前の駅で降りて歩くとか、エレベーターやエスカレーターを使わずに階段にするとか、自転車で出かけるのではなく散歩にするなどの工夫が考えられます。このように体を慣らしてから、徐々にランニングなどの運動を取り入れていくとよいでしょう。

これらは高血圧を改善し予防するための運動習慣に関するアイデアですが、いきなりすべてをおこなうことは難しいでしょうが少しずつはじめて継続することが大切です。それぞれの生活習慣を考慮し取り入れやすいものから増やしていきましょう。