医療あれこれ

コロナ流行で早期ガンの診断が減少した

 欧米ではコロナ流行に伴うロックダウンや医療崩壊で胃ガン、大腸ガンなどを早期発見される症例数が減少する傾向にあることから、今後ガンが原因で死亡数が増加してくることが危惧されています。我が国においてもこういった傾向がみられるのかどうかを検討する目的で、横浜市立大学の葛生健太氏、日暮琢磨氏らは消化器ガンでの受診者の状況を20171月~20202月の期間つまりコロナ流行前と、20203月~12月というコロナ流行期で比較検討した結果を論文発表しました。(JAMA Netw. Open 2021921日版)

 対象症例は食道ガン、胃ガン、大腸ガン、膵臓ガン、肝臓ガン、胆道ガンの症例で、コロナ流行前の受診者は4,212名であったものが、流行期になると949名と流行期では明らかに受診者数が減少していました。これら症例のうち症例数が多い大腸ガンと胃ガンをステージ別にみると、大腸ガンでは、ガン細胞が腸の粘膜内に留まる早期ガンにあたるステージ0ではコロナ流行前に比べ、流行期では32.89%の減少があり、逆にリンパ節転移を認める進行ガンではコロナ流行前に比べ流行期には68.42%の有意な増加がありました。また胃ガンの場合ではステージ1の早期胃ガンはコロナ流行前に比べ流行期では35.51%の有意な減少がみられたそうです。

 コロナウイルス感染によりガンの進行度が増加すること考えにくく、流行前後でガンの発生率が明らかに増加することはわずか数年の間におる変化とは思われません。つまり大腸ガン、胃ガンとも流行期に早期ガンと診断される症例が減少し、大腸ガンで進行ガンの症例が増加したことはコロナ流行の影響で、本来早期に精密検査を受けるべき人たちが受診しなかったのではないかと想定されます。

 大腸がんの早期診断は年一回検便検査を実施し、便に潜血反応つまり微量な血液成分が検出されるとそれは大腸に出血するような病変がある可能性があるとして、二次検査として大腸内視鏡により精密検査をすることが推奨されます。胃ガンについても年1回の胃ガン健診をおこない何らかの異常があった時に精密検査がおこなわれています。初めの健診は受診していても、その後の二次検査まで受診はコロナ感染を心配して控えられたという可能性が想定されると思います。

 早期に調べるべき体から発信された兆候が見逃された結果、病気の進行を速めてしまうことは大変残念なことです。コロナ流行を乗り越えても適切な時期に適切な検査を受けることが重要なことと考えられます。