医療あれこれ

良質な食事は脳にとって良い影響

 質の良い食事を摂る生活習慣は脳にとって良い効果を与え、年齢とともに減少してくる脳容積を保つという研究結果がオランダの研究者から公表されました。(Neurology 2018; 90: e-2166-e2173

  研究は、オランダの地域住民を対象としたロッテルダム研究で、食生活の評価と脳MRI検査により明らかな血管障害がない平均年齢66歳の男女4千人あまりを対象としました。食事の質評価はオランダの食事ガイドラインがどれだけ遵守されているかに基づいて算出。2005年~2015年の間に食事評価とMRI検査を受けて観察しています。途中で食事が不安定な人や脳血管障害や認知症になった人は対象から順次除外され、最終的に4,213人が解析の対象とされています。

 全体の脳容積、および記憶に関係する海馬など各部の容積を解析したところ、質の良い食事の成否と脳容積には関係性が見られました。食事の質のうち、野菜、果物、粒状の穀物、ナッツ類、乳製品、魚の摂取量が多く、逆に糖分を含有した飲料摂取が少なかった人は脳容積が増加することと関連することが明らかとなったのです。また食事内容と小さな脳梗塞や出血などの血管障害との関係はありませんでした。

 結論として、良質の食事は、脳組織量と関連しており、脳細胞の性質が変化して認知症などが発症することを予防する効果があることが示唆されたとしています。

一般に脳容積が減少してくると認知症になると考えられがちですが、脳全体の容積でみると認知症発症との関係性を一概に述べることはできません。つまり脳が萎縮していなくても個々の脳細胞機能、特に記憶や判断能力に関係する部位の機能が低下してくると認知機能の障害が発生しますし、逆に脳全体のわずかな萎縮があっても認知症にならない人は多くみられます。

また良質な食事が維持できるということは、全身的な機能が正常であるということができます。つまり大脳疾患が原因で発生する麻痺などの症状があったりすると、食事をよく噛んで食べ、誤嚥などをしないで飲み込めるなどの食行動ができなくなります。このことから脳機能を含めて全身が健康であるから良好な食事ができるのか、あるいは今回の研究者らが述べているように良好な食事ができているから脳機能が健康なのかは不明です。しかし脳の健康維持という意味から、良好な食生活習慣は脳の機能を維持する前提となるということは間違いのないことでしょう。