医療あれこれ

酒に強いだけで痛風になるリスクが高い

 痛風は血液中の尿酸値が高値になって尿酸が結晶として関節に蓄積し(風に当たっただけでも痛いという)激しい痛みをともなう関節炎を引き起こす病態です。尿酸の原料となるのはご存知のプリン体で、ビールはこのプリン体濃度が高いといわれていますのでビールが好きな人は高尿酸血症になりなすいということが考えられます。ビール以外のアルコールにもプリン体は多く含まれることや、お酒の肴になるような食材には(肉、魚以外に豆類なども含めて)プリン体含有が多いことが知られています。従ってお酒が強く、よく飲む機会が多い人ほど尿酸値が高くなる、その結果として痛風になるリスクは高くなるという流れがこれまで考えられていました。しかし本日の話は、実際にお酒を飲む量が多い少ないにかかわらず、ただお酒を飲ませたら強い(酔っぱらわない)人ほど、たとえお酒を飲まなくても、痛風になるリスクが高いというものです。

お酒に強いタイプの人か弱いタイプの人かは、その人が持っている遺伝子によって決まってきます。お酒を飲んだ後の血液中のアルコールは分解されて一部はアセトアルデヒドという物質ができますが、このアセトアルデヒドがお酒を飲んだ後の気分不良や二日酔いの原因になるのです。そこでアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)という酵素活性が強い人はアルコールを多量に飲んでも気分は悪くならないことから、お酒に強い人といわれるようになります。またアルコール脱水素酵素(ADH)という分解酵素もあってこの活性が強い人はアルコールを飲んでもどんどん分解されることからお酒に強くなります。これらALDHADHの活性により、その人がお酒に強いか弱いかを決める要因になるのです。

今回の研究報告結果で痛風になるリスクは、実際の飲酒量には関係なく、ALDHADHの活性自体と統計学的に有意であるということでした。つまり飲む、飲まないに関係なく、その人がお酒に強いという体質を持っているだけで痛風になりやすいということを示しています。「自分はお酒にはめっぽう強いけれどほとんど飲まないので痛風にはならない」と思っている人も、酒に強いだけで実際には痛風のリスクが高いから、他の人よりも食べ物に厳重に注意するなどの対策が必要だということを示したものと言えるでしょう。

引用文献:Sakiyama M, Matsuo H. et al. Scientific Reports (2017), 1-6. DOI:10.1038/s41598-017-02528-z