医療あれこれ

コレステロールと中性脂肪

 血液中の脂質として、一般検査としてよく測定されているのが中性脂肪とHDLコレステロール、LDLコレステロールの3種類です。コレステロールと中性脂肪は体の中でその役割が異なります。中性脂肪は、体を動かすエネルギー源として働きます。エネルギー源として摂取された糖分などがエネルギーとして使われないで余ってくると、中性脂肪に変換されて蓄えられるしくみになっています。この変換に関わっているのが、血糖のコントロール作用で知られるインスリンというホルモンです。

 一方コレステロールは体の組織・細胞を作ったり、ある種のホルモンの原料になります。コレステロールという名前の由来は、元来、胆石症で胆のうや胆管に形成される結石のうちコレステロールが主成分の場合がありますが、これから抽出された成分です。ギリシア語で、胆汁という意味の"chole"(コレ)と、結石あるいは固体を意味する"stereos"(ステレオス)のふたつを一緒にしてコレステロールと名付けられたのです。そしてよく知られているように、動脈硬化を作っていくLDLコレステロール(つまり"悪玉コレステロール")と逆にこれを予防するHDLコレステロール(善玉コレステロール)があります。実は真逆の作用をもつこの二つのコレステロールの違いは、コレステロールを血液中で運搬するリポタンパクにあります。低比重リポタンパク(low density lipoproteinLDL)に結合して運ばれるのがLDLコレステロール、高比重リポタンパク(high density lipoproteinHDL)に結合して運ばれるのがHDLコレステロールというわけです。

 以前、このコレステロール(あるいは中性脂肪も含めて)検査値が異常を示す疾患名を「高脂血症」と呼んでいましたが、最近は「脂質異常症」というのが正式名称になっています。コレステロールが増えると動脈硬化が悪くなるので具合が悪いという意味で「高脂血症」といわれていましたが、HDLコレステロールについては動脈硬化を予防するように作用しますから、少なくなると具合が悪い、そこで「高脂血症」という病名を「脂質異常症」に変えたというわけです。

 さらにLDLコレステロールのうちでも、活性酸素などに攻撃をうけて酸化された酸化変性LDLは血管壁に侵入しやすいので、より動脈硬化を起こしやすいのです(下の図)。ですから将来的には健診などでLDLコレステロール全体の量を測定するより、特に具合が悪い酸化変性LDLコレステロールを測定して動脈硬化になりやすいかどうかを見極めるようにしていく必要があると考えられます。

(図の出典:バイオマーカー・サイエンス)

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