医療あれこれ

慢性腎臓病(CKD)

 腎臓は左右の腰に1個づつあり、ソラマメのような形をした握りこぶしくらいの大きさの臓器です。尿を作って排泄することは腎臓の重要な役割の一つですが、これは体の中の不要な水分を体外に排泄するだけでなく、体内の代謝作用などで発生し血液中に増えてくる老廃物を溶かし込んで排泄しています。ですから腎臓の機能が低下すると、体内に老廃物が蓄積し、いわゆる尿毒症となって生死にかかわる状態となってしまいます。そこで腎臓の機能がすっかり低下してしまった人に対して、例えば機械を使って、この血液中の老廃物や余分な水分を取り除く人工透析療法が必要になってくるわけです。世界的に見て、末期の腎臓病(末期腎不全)となり、人工透析療法が必要となった人の数は増加傾向にあり、これに要する医療費など、経済的にも大きな問題となっています。

 近年、この慢性腎臓病(CKD)が注目されています。なぜかというと、CKDは糖尿病や高血圧などの生活習慣病が原因となって発症する場合が多いからです。糖尿病や高血圧は言うまでもなく、脳梗塞などの脳血管疾患や、心筋梗塞などの心血管疾患の大きな危険因子です。さらに内臓脂肪が蓄積したメタボリックシンドロームは、乱れた生活習慣に基づくことが多く、CKDの発症、進展に関係しています。

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右の図は以前に医療あれこれでもご紹介した久山町研究で得られたメタボリックシンドロームの有無とCKD発症率をみたものです。明らかにメタボリックシンドロームである人の方がCKDを発症しやすいことがわかります。(引用文献:Ninomiya T, et al. Am J Kidney Dis 200648383--391.

ですから、腎機能の低下した状態、つまりCKDは、心臓・脳などの血管疾患に関連します。ことばを変えると、CKDは脳梗塞や心筋梗塞の危険因子であるということができます。腎機能のわずかな低下、つまりCKD発症の早期を発見し、これを悪化させるメタボリックシンドロームを厳重にコントロールしていくことが重要です。このため生活習慣の改善および、場合によってはお薬による厳重な治療の必要性が生まれてきます。