医療あれこれ

医療の歴史(116) 血圧測定の歴史

 最近放映されているトクホのソフトドリンクCMに黒澤明監督の映画「赤ひげ」に登場する赤ひげ先生が描かれています。

「赤ひげ先生、血圧が130を越えると血圧高めなんですよ」という高橋克実さんに対して、赤ひげ先生は「なに!130越えると?」そしてそのドリンクを飲んで「うまい!これで皆も喜ぶだろう」というテレビCMをご覧になった方もいらっしゃるでしょう。このCMに登場する赤ひげ先生役は映画の三船敏郎さんではなく別の役者さんですし、赤ひげ先生は鎖国中の江戸時代での話の設定ですから言うまでもなく、血圧や血圧測定法などが知られていなかった時の全くのパロディーです。

 それでは、血圧を測定するという行為がおこなわれたのは何時頃なのでしょうか。1956年、ドイツの心臓外科医であるワーナー・フォースマン(1904~1979)は、心臓までカテーテルを挿入して心臓のX線撮影をおこなったという心臓カテーテル法の創始者としてノーベル賞を受賞しました。この受賞記念講演の中でフォースマンは、心臓カテーテルのアイデアはイギリスの牧師ステフェン・ヘールズ(1677~1761)によりおこなわれた馬を使った動物実験にヒントを得たと述べています。ヘールズがおこなった馬の動物実験は1733年のことで、フォースマンのカテーテル法実施より200年以上も前の話です。ヘールズはこの時、馬の心臓近くの血管内の圧力を測定していたのでした。そこで世界で初めて動物の血圧を測定したのはイギリスのヘールズであり、この業績が紹介されたのは、200年後のドイツのフォースマンということになります。動物実験ではなく、人間の血圧を測定することが可能になったのは水銀血圧計が発明されるまでのさらなる100年以上という時間が必要でした。

引用文献 久保田博南:血圧測定の歴史.医機学(2010)80615~621.