医療あれこれ

食物繊維を食べると認知症の予防になる

 これまでにも認知機能と食物繊維の関係が注目されていましたが、この度、多数の日本人を対象とした食物繊維の摂取と認知症の関係を追跡調査した結果が報告されました。調査したのは筑波大学医学医療系ヘルスサービス開発研究センターの山岸良匡教授らの研究グループです。筑波大学の大規模コホート研究を実施している秋田、茨城、大阪の地域住民で40歳~64歳の3,739人において、いも類、野菜、果物の摂取量を21年間追跡し、この間に発症した要介護認知症を登録し関係性を調べました。分析の基になった食物繊維摂取量は毎日の食事内容を聞き取り調査したそうです。水溶性と不溶性に分けたいも類、野菜類、果物類の摂取量に応じて、摂取量が最も少ない群から最も多い群の4群に分けて各群での要介護認知症発症リスクを比較検討すると、食物繊維摂取量が多い群ほど認知症リスクが低下する傾向が見られました。つまり食物繊維摂取が多いほど認知症発症は少ないことが明らかとなりました。この傾向は水溶性食物繊維が多いほどより強く認められ、要介護認知症の発症が抑制されるという結果でした。

 食物繊維を摂取することによって腸内細菌が影響を受ける事は知られています。今回の結果から、腸内細菌は消化管の疾患だけではなく認知機能にも関与していることが推察されます。食物繊維を多く摂取すると腸内細菌が変化し、神経細胞の炎症性変化が抑制され、認知症発症が抑制されたと考えられます。

(引用文献:Nutritional Neuroscience at DOI: 10.1080/1028415X.2022.2027592)