医療あれこれ

フレイルの予防に緑茶がいい

 以前にこの項でも何度かご紹介しましたが、フレイルは「虚弱」の日本語訳で、要介護状態のように病的ではないものの全く健康ではないような身体機能や認知機能が低下した状態のことです。身体的機能だけではなく、精神的、心理的な機能や社会的な状態が完全には健康といえない状態です。要介護状態の予備群ともいわれています。年齢を重ねてもフレイルを予防するためには、抗酸化作用が強い野菜や果物を多くとるとか、タンパク質を積極的に取り入れるなど、食事内容の工夫がよいとされています。

 緑茶にはカテキンなどの抗酸化作用をもつ物質が含まれていることから、これまでにも緑茶にはフレイルのリスクを抑制する作用が強いと考えられています。しかしこれを健康増進対策として強く推奨する根拠は必ずしも十分ではない面もありました。

 京都府亀岡市では、京都府、京都府立医科大学、国立健康栄養研究所などが中心となって、高齢者の健康寿命を延伸し、要介護状態を予防するための対策を立案するための調査研究が進められています。この度、国立健康栄養研究所の南里妃名子氏らはここで得られた結果をもとに緑茶の摂取頻度とフレイルのリスクとの関連を解析して、学術雑誌「Nutrients」に公表しています。

 研究の対象は5668名の65歳以上の男女で、緑茶の摂取頻度はアンケートにより「ほとんど飲まない」「一日12杯」「一日3杯以上」の3群に分類して検討されました。その結果、男女とも緑茶摂取頻度が高い群は高齢群で、エネルギー摂取量、果物・野菜の摂取頻度が高く、喫煙者は少なく、コーヒー摂取頻度が高いことが判りました。しかし体重や飲酒とは関連が見られませんでした。フレイルの人は男性で29.3%、女性で30.6%でしたが、男女とも緑茶摂取頻度が高いほどフレイル有病率が有意に低くなる傾向が認められました。また男性では認知機能や口腔機能と緑茶摂取頻度との負の相関が、女性では認知機能、口腔機能に加えて日常生活動作や運動機能との負の相関が認められました。

 これらの結果より、緑茶摂取頻度が高いほどフレイル有病率が低くなることが確認されました。女性では閉経後にホルモン分泌低下とともに全身の慢性炎症傾向が強くなるが、緑茶の持つ抗酸化作用がより効率的にフレイル発症に効果をもたらすのではないかと考察しています。