医療あれこれ

高齢者の骨折をどのように予防するか

 先日、「白内障の手術で高齢者の骨折リスクが低下」という話題をご紹介しました。若い人は転倒しても骨折を引き起こさないことが多いのに対して高齢者における骨折のほとんどは転倒が原因で起こっています。これは加齢に伴って骨の強度が低下してきているためであることは言うまでもありません。

 高齢者が転倒する危険因子として、転倒歴が挙げられています。つまり一度、転倒した人は再度転倒しやすいというのです。だからといって転倒を完全になくすことはできません。それでは、骨の強度が多少落ちていても、筋力を強化しておけばよいだろうということが考えられます。筋力が十分にあれば体を支えることができますから、転倒防止になることが想定されます。よく運動をしている高齢者は転倒・骨折の割合が低くなるだろうというのです。

 転倒予防教室が色々な所で実施されており、その主催者の報告では、参加した人の転倒は減少しているといいます。しかし本当にそうなのかどうかは不明です。なぜなら、転倒予防教室に参加するような人は運動しようとする意欲が高く、さまざまな日常生活に積極的であることから、初めから転倒の危険性は低いとも考えられます。

 それでは、歳をとっても骨の強度が落ないようにしてはどうか、ということが考えられます。カルシウムを多く摂取するとよいとよく言われますが、これだけではだめで、食べたカルシウムが胃腸で吸収され、骨の成分になるためには、脂肪に含まれるビタミンDを活性化する必要があります。そのために日光に当たったり運動することが重要になってきます。

 また骨の量が減ってしまう骨粗鬆症の治療薬の中には、骨折抑制効果が証明されているものがあり、このような薬を用いるのも一つの方法です。さらに、お尻を保護する装具(ヒップ・プロテクター)なども転倒・骨折を起こす危険性が高い高齢者には有効だということも報告されています。

 特に閉経後の女性は女性ホルモンの関係で骨の量が著しく減少します。一度は骨量を測定してみてはいかがでしょうか。


参考文献 小池達也:日本医事新報 2012462178-83.)