医療あれこれ

子供の頃から認知症予防

 アルツハイマー病を始めとする認知症は現在特に注目されるべき問題点となっています。この認知症予防に関してアメリカから認知症12の危険因子が公表されています。 Southern California Univ. Health Sciences. Peer-Reviewed Publication Forty percent of dementia cases could be prevented or delayed by targeting 12 risk factors throughout life. News Release 30 July 2021. 
それによると人間の一生を通して認知症の予防につながる12の危険因子があるというのです。その内容は、若齢期には低教育7%、中年期には難聴8%、頭部外傷3%、高血圧2%、アルコール1%、肥満1%、そして晩年期には喫煙5%、うつ4%、社会的孤立4%、運動不足2%、大気汚染2%、糖尿病1%、以上の12項目です。これらの認知症発症に関与するパーセントをすべて加算すると40%になり、すべて解消することができれば認知症発症を40%抑制することができるといいます。  
 このうちで今回注目しているのは、若齢期の低教育という危険因子です。この項でも以前に教育レベルと認知症(2019年2月18日付医療あれこれ)でご紹介しましたが、人間の一生のうち教育を受けている時間が長いほど認知症予防につながるというものです。別のデータによると、11~12歳で教育をうける期間を終了してしまうのではなく、できるだけ年長になるまでの教育期間があった方がよいとされています。しかし教育を受けるといっても、詰め込み式の教育を受けるだけでなく、子供のうちにさまざまな幅広い経験をさせることが重要です。こうして子供のころに脳のネットワークが強化されていると、これを基礎にして晩年期には認知症予防対策はより有効となるというものです。  
 中年期におけるメタボ対策や、晩年期になってからの運動や周囲との会話などの付き合いなどに重点をおいた認知症予防よりも、若齢期の教育を充実するという対策の方が潜在的な予防効果として効率的であると思われます。