医療あれこれ

かかりつけ医と健康診断

高血圧、糖尿病、脂質異常症などの慢性疾患に対する治療のため、いつもご近所のかかりつけ医を受診している人のうちには、市民健診やがん検診など一般に提供されている健康診断を受診しない方もいます。いつも診てもらっているから、自分の体のことはかかりつけ医がすべて把握しているはずだから、改めて別の医療機関を受診して健診を受けなくてもよいと考えられておられるのでしょう。

今年の夏、開催された第11回日本プライマリー・ケア連合学会において、千葉大学病院総合診療科から、通院していればがん検診は不要と考えている人が半数以上いるという報告がありました。これは同診療科を定期的に受診している人について、大腸がん、胃がん、肺がんの検診を受診しているかどうか、受診していないとするとその理由は何かを調べたのです。その結果、大腸、胃、肺すべて受診した人は6.9%、これに対してまったく受診していない人は68.9%でした。未受診の理由は、「定期受診しているから不要と考える」が50.0%、「2年以内に胃カメラを、数年以内に大腸カメラ、1年以内に胸部X線検査を受けた」が32.2%だったそうです。

慢性疾患で定期受診して、一般的な診察や血液検査などは時々かかりつけ医で受診していたとしてもがん検診に必要な特殊検査はかかりつけ医では通常おこなわないでしょう。その他の問診などで胃腸などに異常があれば、かかりつけ医に申告するでしょうが、その時には症状は進行してしまっているでしょうし早期診断のための検診にはなりません。かかりつけ医での診療を少し誤解されているようにも感じられます。人間ドックや特殊検診などもできればかかりつけ医とご相談の上、適切に受診されればよいと思います。

 一方、最近体の不調があるのだけれど、「もうすぐ健診があるからそれで診てもらうわ」と言って早く受診されればよいのにと思われる状態でもしばらく「様子を見る」などと放置されている方もおられます。これでは病気を早期発見する機会を逸してしまうことにもなりかねません。また健診における診察や検査は、あくまで受診者が「健康である」ことを調べるものですから、体の不調があるその時には、健診における診察担当医に訴えるのではなく、かかりつけ医に相談し、必要に応じて専門医を紹介受診するなど適切な対応を受けるのが宜しいかと思います。