医療あれこれ

花を観賞してリラックス

 新型コロナ感染では、緊急事態制限は解除されても新規感染者数は増加し、気分が落ち着くことはなかなかできませんが、この度、花を観ることにより心的にリラックスした状態が得られることを示す実験的データが公表されました。

 これまでにも自然の風景を観たり、散歩することはストレスの緩和につながるという調査結果はいくつか報告されています。しかし花を観賞することによりリラックスした心理的状態が得られるという実際の検証は十分におこなわれていませんでした。日本の農業食品産業技術総合機構の研究グループは、ボランティアに対して実験的に花の絵を観てもらうことによるストレス緩和効果を調査して、その機序についての考察を公表しました。

(Mochizuki H, et al. Journal of Environmental Psychology 70 (2020) 101445.)

 平均年齢24歳の健康な被験者35人を対象に、事故の写真、ヘビなどの不快な写真、白い菊、青空、イスなどの写真を6秒間見せてストレス状態を調べました。調べた項目は血圧の変化、ストレスホルモンといわれるコルチゾール値、さらにMRIを用いて右脳のストレスを感じる領域の活動性などを比較検討したのです。

 その結果、青空など心が落ち着くと思われる写真を見せてもある程度のストレス緩和効果がありましたが、花の写真を見せたときのみ統計学的に有意な血圧の数%低下が認められ、唾液中のストレスホルモンであるコルチゾールは花の写真による20%以上低下しました。またMRI検査では、右脳の扁桃体から海馬領域において神経活動性の低下が認められました。この脳領域は物事を不快感じた時に活動するもので、花の写真を見た時に活動性低下が認められたことは、花以外の被写体を撮影した写真に比べて、花の写真を見ることにより不快感が抑制され、ストレス緩和効果があることが推察できます。

 研究者たちは、花の鑑賞により健康を増進させる効果がある可能性も今後の検討により明らかにしたいと述べています。