医療あれこれ

ブルガダ症候群

 ブルガダ症候群は心臓の筋肉が収縮したり弛緩したりするリズムを表す診断図検査において、筋肉内の刺激伝導が正常ではないことを示す波形が認められます。この状態では自覚症状などはないのですが、あるとき突然致死的な重症の不整脈である心室細動がおこるのです。心室細動は心筋が細かく震えている状態で、心臓から血液が有効に送り出されず脳の血液循環が不全になることから失神発作やけいれんなどがおこり、適切に処置されないと突然死に至ってしまいます。心筋梗塞や心不全といった心臓疾患があれば心室細動を合併することはありますが、ブルガダ症候群ではこのような基礎疾患が無い場合でも心室細動が突然おこることがあります。昔から突然の心臓発作により死亡した人は「ぽっくり病」などと呼ばれていましたが、この内に今でいうブルガダ症候群が含まれていたと想定されます。

ブルガダという名前はこの症候群を最初に報告した人の名前でスペイン人の三兄弟医師が1992年に公表しました。つまり比較的新しい疾患の概念です。発症頻度は人口の0.1%程度であり日本人を含むアジア人の2050歳の男性にみられます。発症原因として遺伝が考えられ遺伝子の一部は救命されていますが、明らかに遺伝子の異常が調べられている人でも心室細動や心停止が出現する頻度は高くありません。

それまで無症状だった人に突然心室細動が出現し失神発作を起こす頻度は数%ですが、これまでに心室細動、失神発作また一過性の心停止の既往があり救命処置を受けた人での発作の再発率は1015%とされ、発作の予防処置が必要です。しかし薬物投与で予防効果が有効なものは今のところなく、予防としては電気的除細動器(ICD)を植え込み、発作がおこったとき自動的に心室細動の治療を開始することが必要です。

無症状で健康診断を受けた人で心電図の異常を指摘されて精密検査を受け診断されることが多くあります。健康診断でブルガダ症候群の疑いが認められた場合、循環器専門医を紹介しますが、しっかり状況を把握して、必要に応じて適切な処置を受けることが必要です。