医療あれこれ

新型コロナウイルス「抗体」を検出

 細菌やウイルスに感染すると、人の体ではこれら病原体を駆除する目的で免疫反応が動き出します。この際、病原体のタンパクが病気のもと(抗原)を駆除する目的で抗体というタンパク質が数日後に形成されます。抗体は病気のもとである抗原と結合して抗原抗体複合物が形成され抗原は体から駆除される、というのが免疫反応の一つである抗原抗体反応です。抗原抗体複合物は例えていうと、病気という事件を起こしている犯人である抗原を逮捕した警察官ということができます。こうして抗体ができると病原体自体である抗原に対して免疫ができて感染症は治癒したと考えられるわけで、多くの感染症に対する免疫反応は基本的にこのように成り立っているのです。

 今問題となっているCOVID-19(新型コロナウイルス)感染の診断で用いられているPCR検査は、ウイルスのDNA(これが抗原にあたります)を増幅させて検出する検査法です。COVID-19感染者が入院して治療を受けた後、抗原が検出されなくなったとき「陰性」と判定され病気は治癒したと考えられるのです。しかし上述のように「抗体」が陽性である状態にならないと再び感染は起こらないという証拠はないわけで、この数日間マスコミで問題にされている「再感染」などのリスクは残ったままといえます。

 このたび横浜市立大と横浜市は、新型コロナウイルスのウイルス抗体の検出に成功したと発表しました。これを調べる検査法には2種類あり、「抗体」の有無だけを調べる簡易法と、抗体の分量を測定する酵素免疫測定法(ELISA法)があります。ELISA法は結果がでるまでに2時間半ほどかかるそうですが、簡易法では1530分で結果がでるといいます。インフルエンザの簡易検査と同じ位の所要時間ですね。

 従来のPCR法による抗原を検出する検査と、今回の二つの抗体検査を組み合わせれば、初期の感染の有無判定と治療後の治癒判定がより精確におこなえるようになることが期待されます。

引用:日本経済新聞 2020/3/9