医療あれこれ

新型コロナウイルス~あれこれ

 新型ウイルスによる肺炎その他の医療問題については、連日の新聞・テレビの報道で刻々と新しい情報が発信されています。新型コロナウイルスの名称についても当初は、一部の報道で「武漢ウイルス」などと呼ばれ、これが原因の病名を「武漢肺炎」などとされていましたが、名称に地名が入っているとデマ、風評被害、差別、迫害の原因となるため、わざわざ固有名詞を使わず「COVID-19」とすることが公表されています。「コービッド」あるいは「コビッドーナイティーン」などと発音すればよろしいといわれています。2019年から問題になったCorona virus (induced) disease~コロナウイルスが原因でおこる病気ということですね。

 214日現在で日本の感染者数は251人、世界全体で46,997人と公表されていますが、これについては連日増加していますので新聞・テレビの報道をご覧下さい。しかし報道される情報についてみると、どうも誇大な内容もあり、かえって世間の不安が増大する原因になる事もあるようにも感じられます。例えば「エアロゾル感染」という言葉がでてきますが、小さな粒子が感染患者の周囲に集まっているという概念的な名称です。いかにも感染した人に近寄ってはならない、などの不安をあおる原因にならないか心配です。

 前回も触れましたが感染の予防は、身体をできるだけ健常な状態にすること、過労や睡眠不足をさけること、そして「うがい」「手洗い」といった基本的な予防策を励行することでしょう。マスクについては、品薄で手に入りにくいという状況といわれますが、普通のマスクをしているだけで呼吸器感染が予防できるとは限りません。感染している人が咳、クシャミで飛沫を介して他の人にウイルスを感染させることの予防にはなるかも知れませんが、理論的に健康な人の体にウイルスが侵入することの予防にはならないことも考えられます。N95マスクと呼ばれるウイルスほどの小さい病原体も通過しにくいマスクならまだ予防効果はあるかも知れません。

 ところでマスクをして街を歩いている人々を見ると、以前に比べてさすがに鼻を丸出しにして何のために「口だけを覆ってマスクをしているの?」と思ってしまう人は少なくなりました。いうまでもなく、マスクは鼻と口をしっかり覆うことが大切ですね。しかしまだ鼻と頬の隙間が大きく、「花粉やウイルスさんたち、どうぞ私の上気道に入ってきて」といわんばかりのルーズなマスク装着をしている人もいますね。同じことならしっかりと装着されることをお願いしたいと思います。

 「ダイヤモンドプリンセス号」に乗船中の乗務員を含めた乗客の方々などは特にそうですが、感染があるのかないのか、なぜ全員のウイルス検査をすぐにしないのかと思っている人は多いと思います。インフルエンザウイルスのように、どんな医療機関でも簡便に感染の有無をチェックでる検査キットがあればよいのですが、COVID-19に関してはこのような迅速検査コットはありません。

 ウイルスの存在自体をチェックするにはウイルスの遺伝子(DNA)の情報を増幅させて検査するPCRと呼ばれる操作が必要で、このための体制が不足しています。ましてや現在は体に何の変化もないけれどちょっと検査だけしたいという人全員の希望を受け付けることは不可能です。インフルエンザ検査と同じように5分間で結果がでる迅速検査キットについては比較的早期に入手できる見通しのようです。

 感染を予防するワクチンや、感染症になってしまったときの抗ウイルス薬などは数年で作られるようです。感染予防については、ウイルス感染の存在がはっきりしている人に対してだけ特別な対応をするより、感染の有無に拘わらずどのような人に対しても感染があるものとして予防に心がけることが重要です。これを標準予防策(スタンダード・プリコーション)といいます。私たち医療関係者だけでなく、特に接客業など対人関係が重要な仕事をされている方はこの考え方が大切であると考えられます。