医療あれこれ

高齢者では昼寝時間が長いと認知症になる

 高齢者ではよく昼寝の生活習慣が見られます。しかし昼寝時間が長すぎると、夜間の睡眠に影響を及ぼすなど健康生活に支障がでる恐れがあります。このたび昼寝時間が長いことによって認知症になるリスクが高くなるというデータがアメリカのボルチモアで開かれた第32回米国睡眠学会において報告されました。

 研究報告をしたのは、アメリカのカリフォルニア大学サンフランシスコ校のYue Leng氏らで、65歳以上の男性2751人を対象にして昼寝時間が30分以内の人に比べてそれよりも長い昼寝をしている人の時間と12年間の認知症発症リスクの関連性を調べたのです。研究対象となった人たちの内訳は昼寝が30未満の人は1061人、3059分が795人、60119分が642人、2時間以上昼寝している人は253人でした。なお研究開始から2年以内に認知症を発症した人は解析から除外されました。これは調査開始前に認知症の傾向があって昼寝時間に影響を及ぼした可能性を除外するためです。

 その結果、昼寝30分未満の人に比べて、3059分の人では1.17倍、60119分では1.3倍、2時間以上の昼寝では1.8倍それぞれ認知症発症リスクが上昇することが判りました。このうちでも2時間以上昼寝をしている人は統計学的に有意な認知症リスクがあったそうです。また昼寝時間が長いほど夜間睡眠時間に影響がでることが判りました。

 昼寝をする場合、2030分程度までにするのがよいといわれますが、今回の結果はこのことを支持するものかもしれません。逆に常に2時間以上昼寝している人は、昼夜逆転の傾向があったりして、それだけで認知症と関連することが容易に想定されます。長時間の昼寝が必要となっているのは、夜間の睡眠が良好にできていないことを示すものともいえます。

 今回の研究者らはこれまでに昼寝習慣が心血管疾患や肥満、糖尿病、さらに死亡率と関係することを発表していますが、 これらのことと認知症発症の関連にも注目されます。ただし今回のデータでは女性は対象には含まれておらず、女性の場合はどうなのか、また65歳未満の人たちではどうかなどさまざまな疑問点もあります。