医療あれこれ

音楽家の脳活動は演奏の種類で異なる

 音楽と一口にいっても、クラッシック、ジャズ、ニューミュージックなど多彩な音楽分野の種類によってそれらを奏でているミュージシャンの脳活動には違いがあるのか、を調べた研究結果が報告されています。(Sammler D. et al. Neuroimage 2017, 169, 383-394)

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 研究の対象は、プロのジャズピアニストとクラシックピアニストそれぞれ15名を対象にして、映像で示されたピアノのコード進行を演奏する手の動きを見ながら模倣してもらい、同時に脳波で脳活動の部位と波形から、それぞれがどのような意識で演奏しているのかを比較検討したものです。

 その結果、ジャズピアニストでは脳波上のβ波が低下している状態が観察されたのに対して、クラシックピアニストでは前頭葉のθ波が強く観察されるという明らかな相違が認められたそうです。β波の低下は脳波が早く表れる状態で、物事の認識力や集中さらに警戒が表現されており、さまざまな変化にいちいち反応していることを示しています。このことから、ジャズピアノについては和音が重視され、指の運び方に神経が集中し、即興演奏と予期しない和音などに順応していると理解されるといいます。一方、クラシックでは演奏方法が重視され、演奏技術を基本にして、個人の表現力が付加され曲が完璧に演奏されることに焦点が当てられているようです。

 クラシックは伝統的な楽譜に則った演奏方法であるのに対して、ジャズは即興的なアドリブにみられるように独創的な曲作りが進められる、といった具合に演奏スタイルが全く異なります。そのため、ピアノによる楽曲の演奏といっても脳活動のパターンが異なるのはあたりまえということもできます。ただこのような方法で脳活動を科学的に検証することを試みたという意味では興味深い研究であるということはできると思われます。

 医療と音楽の関係でいうと、心理療法の一つで、音楽療法といわれるものがあります。これは音楽を聞いたり、あるいは演奏したりして心理的な効果により心身の健康向上を目的とした健康法です。よくおこなわれているのが、人が集まって一緒に歌をうたうことにより心理的な安静を図るような催しです。ただ個人により好みの音楽は異なり、歌唱力もさまざまですので、どのように調整していくのかは難しい問題と思います。