医療あれこれ

カレーを食べると認知症予防??

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 ウコン(ターメリック)に含まれる黄色でポリフェノールの一種である「クルクミン」は、認知症の発症を予防すると言われていました。クルクミンはスパイスや食品の黄色着色剤として用いられており、カレー粉のスパイスです。そこでカレーを食べると認知症を予防できるのではないかという推測が導かれてくるのです。

 カレーをよく食べている人たちの代表は言うまでもなくインド人です。疫学的データによると、インド人にはアルツハイマー型認知症が少ないことが判っています。アジア人のうち特に高齢者を対象として、質問形式による精神機能検査であるミニ・メンタルステート・テストを実施したところ、黄色カレーを食べる人の群では、食べない人に比べて高得点、つまり認知能力が高い傾向にあったという報告があります。しかし、これだけでカレーを食べる人は認知症になりにくいとはいえません。たまたま、認知症でない人がよく好んでカレーを食べているだけかもしれません。そもそもインド人には認知症が少ないというのは、日本人に比べてインド人の平均寿命は短いですから、その分、加齢に伴って発症する認知症が少ないだけかもしれないのです。またクルクミンを口から食べても腸から吸収される率が高くないことも判っています。いったん吸収されると血液に入って脳に作用するとされていますが、詳細は不明です。

 それではクルクミン自体の生理的な作用はどうなのかというと、抗炎症作用、抗腫瘍作用などの他、抗アミロイド作用が知られています。アルツハイマー型認知症は脳にアミロイドβが蓄積していることが知られていますが、動物実験でアルツハイマー病になったマウスでは、クルクミン投与によってこのアミロイドβ蓄積が抑制されたなどの結果が報告されています。解明すべき点もおおいのですが、クルクミンを含むカレーが認知症を予防するという話題は、特にカレー好きの人にとっては興味深いものでしょう。

 ある有名な認知症専門の先生が認知症予防についての講演をされて、その質疑応答の時に会場の聴講者から「それでは先生ご自身は認知症を防ぐために、何をなさっているのですか?」と質問があったとき、「一週間に二度カレーを食べています」と答えられて会場は大うけだったことがありました。詳細は不明であるにしろ、カレーは認知症予防にとって少なくとも悪影響はないのではないかとも考えられるのでしょうか。