医療あれこれ

「おねしょ」と夜尿症

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 20166月に日本夜尿症学会が「夜尿症診療ガイドライン」を12年ぶりに改訂しました。夜尿症と「おねしょ」は同じものなのでしょうか。夜寝ている間に無意識に排尿してしまう、という意味では「おねしょ」と夜尿症は同じですが、両者の違いはその年齢にあります。1~2歳ごろの幼児が夜、寝ている間に排尿してしまうのが「おねしょ」で、これは病的な状態では全くありません。これに対して5~6歳を過ぎてから夜間睡眠中に無意識に尿を漏らしてしまうものは少し病的であり夜尿症といわれています。今回の改訂されたガイドラインでも、夜尿症は5歳以上の小児が睡眠中に間欠的に尿失禁し、1か月に1回以上の夜尿が3か月以上続くものなどの国際小児尿禁制学会が示している定義が採用されました。

 そして「おねしょ」は病的状態ではなく、放置しておいても年齢とともに自然に治っていくものであること、これに対して夜尿症は治すための適切な治療法があることも明らかにされてきました。そもそも夜尿をする子供としない子供の違いは何なのかという点についても完全には明らかにされていません。これまでは子供の睡眠が深すぎて尿意を感じて目が覚めることがないため夜尿になってしまうと思われていました。しかし最近では、逆に睡眠が浅いため質の悪い睡眠状態が続くことが尿意による覚醒障害をきたすということや、夜間の尿量が多いこと、さらに膀胱に蓄積される尿量が十分でないなどの原因が考えられています。

 「おねしょ」は自然に治るけれども夜尿症には治療法があるのに放置しておいても大丈夫なのか?という点については、夜尿症を放置しても年齢が上がるのにつれて自然治癒するといわれています。しかし、「夜尿症を治療するメリットは大きい」と関西医科大学小児科の金子一成教授は述べていらっしゃいます。つまり夜尿症がある子は、修学旅行や林間学校に行かない、あるいは行きたくないと思ってしまいます。また自尊心が低下し、親子関係の悪化などの原因となることから、夜尿症の適切な治療法が確立されつつあるので治療を受けることがよいということになります。

 夜尿症の治療法としては、排尿を抑制する作用のある脳下垂体から分泌される抗利尿ホルモンの製剤を投与することや、下着に装着したセンサーにより寝ている間の排尿をアラームで知らせて目覚めさせ排尿を促す方法などが考えられています。これらの薬物療法やアラーム療法で8割の子が治癒するという報告もあります。学校行事や人間関係を考えると早く治療してあげるのがよいのではないでしょうか。