医療あれこれ

健康食品とくすりの誤解

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 近年、健康志向の高まりから、いわゆる健康食品が多く発売されており、コマーシャルでよく目にされる機会が多いでしょう。健康食品のうちでも右図に示す表示がなされているのが「特定保健用食品(トクホ)」です。これは製造者が科学的根拠に基づいて国に申請し、個別の審査を経て消費者庁が許可した食品です。健康食品といわれるものにはこのほか、栄養機能食品や機能性表示食品があります。これらは製造者が自己認証によりその成分、例えばビタミンやミネラルなどを表示してその栄養補給に有効であることを示していますが、国に届け出るだけであって、個別に審査を受けているものではありません。これらの他、届出のない、いわゆる一般の健康食品もありますので、これらの区別が明確にできず、その意味を正しく理解していない消費者が約7割いるという調査結果が「くすりの適正使用協議会」から報告されています。さらにこの調査では、健康食品は「くすり」ではないから「副作用はない」と思っている人が5割以上いることも明らかにされています。健康によいからと大量に摂取すると、逆に健康を害することになる可能性があることはいうまでもないでしょう。

 もうひとつの問題は、「病気治療のため健康食品を摂取する」と考えている人が多いことです。例えば「血圧が高めの人へ」という表示がある機能性表示食品だけを摂取して、健診で高血圧といわれたが、これで大丈夫と思っている人もいます。しかし健康食品は「くすり」ではないので高血圧の人の血圧を治療域まで下げるわけではありません。かなり血圧が高い人は降圧剤投与なしで健康食品の摂取だけで高血圧の治療にはならないことを考えるべきです。また血圧の薬は服用しているけれど、これとは別に「血圧によい」健康食品を摂取していることを主治医に伝えていないとアンケートで答えた高血圧の人が5割いるという結果も注目すべきことです。健康食品の本来の目的は健康の維持および増進に役立てるということですから、高血圧という病気をもつ人が健康食品を摂取する場合、主治医とよく相談しながら適切に利用することが大切であると思います。