医療あれこれ

アルコール性急性膵炎

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 膵臓は胃の後ろにあり、さまざまな消化酵素を含んだ消化液(膵液)を生成し、膵管を通して十二指腸へ分泌する臓器です。その膵臓におこる急性炎症が急性膵炎ですが、発症原因の多くはアルコール多飲が原因で、膵臓が生成している膵液により膵臓自体の組織が消化されてしまうという、いわゆる「自己消化」です。その他の原因としても胆石症があって、それが膵管の出口を閉塞することにより膵液の十二指腸への流出が阻害されるような場合もあります。

 症状としては、上腹部痛や背部痛があります。膵臓は胃の後ろにありますので背中が痛いという症状はよく見られます。治療として、急性期には絶飲・絶食と安静で点滴静脈注射により水分や栄養補給をおこなうのですが、絶食にする理由は、急性期に口から食物を食べていると、それに対して膵液がどんどん作られるため、症状が増悪するからです。そして膵液中に含まれるタンパク分解酵素を阻害する薬剤を投与することになります。

 ところでアルコール多飲でなぜ膵臓の自己消化が発生してくるのかという詳細なメカニズムは十分解明されていません。アルコールの膵臓組織に対するさまざまな影響が重なり合うことよ、遺伝的に膵炎を起こしやすい体質であることなども関与しているようです。そこでアルコール性急性膵炎が治療により治ったあと、アルコールを少しくらいなら飲んでもいいのか?ということですが、飲酒が膵炎再発の原因であるとされ、禁酒が原則です。アルコール性急性膵炎自体の経過は良好ですが、これは禁酒をしていることが前提となります。たとえ少量の飲酒でも再発率は上昇しますので、これを防ぐためにも(残念ながら)禁酒を続ける必要があるのです。

 

参考文献:下瀬川徹、粂潔 日本医事新報 No.478661622016.1016