医療あれこれ

お酒が原因の突然死

bounenkai.png

 年末・年始、アルコールを飲む機会が多くなる季節です。しかしアルコールの飲みすぎが原因となって「アルコール関連死」と呼ばれる突然死もおこりうることをご存じだと思います。全ての突然死のうち、「アルコール関連死」は約1割、中年の男性だけをみると突然死の約3割という比較的多くの割合になっていますので、決してまれなことではありません。

 慢性的にアルコールを多飲している人は、肝臓が肝硬変の状態となり、食道の静脈が腫れてくる食道静脈瘤が突然破裂して死に至ることがあります。しかしアルコールによる肝障害というと、アルコール多飲が原因で肝臓に中性脂肪がついてしまう「アルコール性脂肪肝」がほとんどで、肝硬変になるのはC型肝炎ウイルスの感染が原因であることが多く、「アルコール性肝硬変」はむしろまれです。

 アルコールを飲み続けていると、肝臓の異常よりも、膵臓が慢性膵炎の状態になっていることも考える必要があります。膵臓からは小腸で食べたものを消化する消化液(膵液)が生成・分泌されます。それと同時に血糖値をコントロールするインスリンやグルカゴンといったホルモンが生成・分泌されていますから、慢性膵炎の状態ではこれらホルモンの分泌バランスが悪くなって、アルコールの飲みすぎにより、血糖値が異常に高くなったり、血液中のケトン体という代謝物が多くなり血液が賛成になってしまう「アルコール性ケトアシドーシス」という状態が発生し、意識がなくなってくることもあります。また逆にインスリン・グルカゴンの分泌不全は低血糖を引き起こし体全体の具合が悪くなる病態も考えられます。さらにアルコールが原因で心臓の筋肉が障害される「アルコール性心筋症」が併発する可能性があるなど、突然死につながるさまざまな病気が考えられます。

 一方で、病気だけでなく、当然ですが酩酊状態になると、転落事故があったり、飲酒後入浴して溺水事故、寒冷時に屋外で眠り込んでしまったためにおこる凍死など、さまざまな事態がおこる可能性も考えなければなりません。

 年末・年始は愛飲家にとっては楽しみな季節ではありますが、飲み過ぎずほどほどの飲酒にしておいて頂いた方がよいと思います。

引用文献:鈴木秀人、福永龍繁 日本医事新報 

N0.47802015.12.5 P.56.