医療あれこれ

小腸の内部を調べるカプセル内視鏡

 胃や大腸などの消化管におこる病気の診断に内視鏡は必須の検査方法です。食道や胃、十二指腸など口から近い上部消化管疾患の診断には胃内視鏡(胃カメラ)が用いられます。口から胃カメラを飲み込む時、局所麻酔を施しますが、どうしても飲み込みにくい場合には最近では鼻から挿入する細い胃カメラが用いられます。一方、大腸疾患の診断には大腸内視鏡(大腸カメラ)が用いられ、肛門からカメラを挿入して大腸内部を検査します。しかし消化管の中で胃と大腸の間にある小腸は消化管の中でも最も長く、筋肉の収縮がなければ全長は約67m、通常は収縮して存在するので約3mの長さがありますが、この小腸の内部を検査する内視鏡は、口や鼻から挿入する胃カメラおよび肛門から挿入する大腸カメラの両方とも小腸まで届きません。そこで開発されたのが飲み薬のカプセルのような形をしたカプセル内視鏡です。

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右の写真は米国ギブン・イメージング社のもので、長さは約2.5cm、太さは直径約1cmといった大きさで、写真の右側にカメラがあります。患者さんに飲み込んでもらうと、1秒につき2回の内視鏡写真が撮影され、検査時間は約8時間で、1回の検査で小腸内部をすべて検査することが可能です。

 これまで小腸の検査というと、検診などで行われている造影胃部X線に用いられる造影剤のバリウムを鼻から挿入したチューブを通して小腸に注入しX線写真をとることしかできませんでした。しかし2001年にこのカプセル内視鏡が新たな検査法として導入され、小腸の内部を詳しく調べることが可能になったのです。小腸には胃や大腸のようにガンなどの悪性腫瘍はあまり発生しないので、20世紀までは小腸内部の構造を調べることはできなくても仕方がないと思われていましたが、カプセル内視鏡の登場により非常に有用な検査法が確立されました。

 原因不明の難病のひとつで、腹痛、下痢が持続し栄養不足になるため低タンパク血症になるクローン病という病気があります。クローン病は口から肛門まですべての消化管に発生しますが、特に小腸で典型的な縦走潰瘍や敷石状粘膜といった病変が観察されることから、小腸の内部を詳しく調べることは必須となります。カプセル内視鏡はクローン病の小腸粘膜の状態を調べることができ、診断や状態の把握に極めて有用です。ただしクローン病ではその炎症性病変のため小腸狭窄を伴うことも多く、カプセル内視鏡がここを通過できずに腸内に残ってしまうという危険性もありました。そこであらかじめカプセル内視鏡と外見上は同じ形で時間が経つと溶けてしまう素材でできがカプセルを内服してもらい、これが小腸を通過して原型のまま体の外に排出したことを確認してから実際のカプセル内視鏡を飲んでもらうという手順がとられます。この方法によってクローン病の患者さんに安全にカプセル内視鏡検査ができるようになりました。