医療あれこれ

25歳以上の日本人4分の1は脳卒中を発症する

 昨年末、世界疾病負担研究2016の資料を用いて世界の25歳以上における脳卒中発症リスクが公表されました。

 (N Engl J Med. 2018 Dec 20;379(25):2429-2437.  doi:10.1056/NEJMoa1804492.)

この統計解析は、疾患を脳卒中に限定し、再発例を除いて初発例のみで解析したものです。その結果、世界中で25歳以上の24.9%が生涯の内に脳卒中を発症するリスクがあるというものです。脳卒中には脳出血などの出血性脳卒中と、血管が閉塞しておこる脳梗塞がありますが、出血性脳卒中の生涯リスクが8.2%であったのに対して、虚血性脳卒中の生涯リスクは18.3%と高かったそうです。

国別でみると中国が39.3%と最も高率であり、地域別でも東アジアの脳卒中リスクが38.8%であったのに対して、最も低率だったのはサハラ以南アフリカ東部の11.8%でした。ただし、「サハラ以南のアフリカで脳卒中が少ないのは、医療レベルが高いためではなく、脳卒中以外の疾患発生が多いためだ。」と著者らは述べています。

日本の結果をみると、男性では22.5%、女性では23.6%、全体で23.0%の脳卒中発症リスクとなっており、4.3人に1人の割合で一生のうちに脳卒中を発症すると考えられるそうです。以前にこの項で(医療あれこれ2012612)2012年の調査結果で日本人の死因は、多い順にガン、心疾患、肺炎となり、1951年以来、久しぶりに肺炎が死因の第3位となったこと、また長年、三大疾患の一つとされてきた脳血管疾患(脳梗塞や脳出血)は、わずかの差で第4位に転落したということをお伝えしましたが、2017年の死因調査結果解析では、脳卒中が再び第3位に返り咲いています。

     (1:ガン、2:心疾患、3:脳卒中、4:老衰、5:肺炎)

この結果は、実際に脳卒中が増加しているというより、統計基礎データの解析基準が変更されていることによると思います。それより話題はれますが、老衰で亡くなる人の割合が年々確実に増加しています。健康意識の向上で、何らかの病気を患って亡くなるより、生涯健康で天寿を全うする方がよいのはいうまでもありません。

 話を元に戻して、この死因統計からすると、日本において脳卒中で亡くなるのは12人に1人という計算になるといいます。脳卒中が発症してもそれが原因でそのまま死亡するのではないということですが、問題は脳卒中で死亡しなくても、麻痺などの後遺障害がないようにどのような対策が立てられるかということになると考えられます。