医療あれこれ

甲状腺ホルモン分泌調節と脂肪
2012年1月22日

 気管の前でのどぼとけの下に蝶ネクタイのように存在する甲状腺。このホルモン産生臓器から分泌される主要なホルモンが甲状腺ホルモンです。甲状腺でチロシンというアミノ酸分子にヨウ素が結合したものですが、ヨウ素の数によってT3T4という2種類のホルモンがあり、臨床的に血液で検査するときは体内で直接作用するフリーT3、フリーT4として測定します。その分泌は下の図のように脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって調節されています。もしT3,T4が多くなると、フィードバック機構によって下垂体からのTSHが減少してT3,T4を減らすようになります。

T3T4.jpg 甲状腺ホルモンが異常に増加している病気にバセドウ病がありますが、このフィードバック機構によって甲状腺刺激ホルモン(TSH)が減少していることが特徴的に観られます。

 甲状腺ホルモンの作用は、体の中の代謝を維持し、活性化させるものです。全身の組織でエネルギー産生量を増加させ、細胞の呼吸を促進するため酸素の消費が増加します。エネルギー源として血液中のブドウ糖、つまり血糖値が上昇しますが、それに関連して脂肪の分解が進みます。その結果、血液中のコレステロールは減少してきます。このためバセドウ病などで甲状腺ホルモン(T3,T4)が増加しているとコレステロールは低下し、逆に甲状腺ホルモン(T3,T4)が低下している甲状腺機能低下症ではコレステロールは増加するのです。

 それでは脂質異常症で血液中のコレステロール値が高くて、お薬での治療が必要な人の甲状腺ホルモンは減少しているのでしょうか。ほとんどの脂質異常症は甲状腺ホルモンと関係なく、小腸での脂肪の吸収や、肝臓での脂肪合成が高まっていることが原因で起こりますが、一部の高コレステロール血症には甲状腺ホルモンが関係していることがあります。

 実際、甲状腺ホルモン(T3,T4)の値には異常はないけれど、甲状腺刺激ホルモンがわずかに増加している潜在性甲状腺機能低下症では、高コレステロール血症が認められることもあると報告されています。潜在性甲状腺機能低下症は人口の1割以下ですが、年齢を重ねると増加すると言われています。




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