アニサキス幼虫による食中毒

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アニサキス幼虫による食中毒

 最近の新聞報道で、アニサキス幼虫による食中毒の発生数が増加していることが報じられています。(朝日新聞デジタル;2019313) アニサキスとは魚あるいはクジラなどの海洋哺乳類に生息する寄生虫で、糞便から排泄されたアニサキスの卵を食べた魚の中で生育した幼虫を人間が生食して消化管に感染がおこるものです。これまで、アニサキスというとサバやイワシなどを生食すると感染することが知られていましたが、2018年の統計ではアニサキスはカツオから感染した場合が最も高頻度であったそうです。教科書的にはサバ、イワシ、アジ、タラ、サケ、イカなどの生食で感染するとされていましたが、カツオの刺身が感染源になるのは意外と思われるでしょう。朝日新聞によると、「海水温の変化などで昨年カツオがとれた海域にアニサキスが寄生する餌が多かった可能性もある」としています。

 感染源となる魚を食べた後、数時間で腹痛や嘔吐などの症状が出現します。通常の細菌性食中毒に比べて短時間で症状が出現するのが特徴です。また腹痛は、痛みがある時とない時が間欠的に出現するのが特徴です。これまでこの痛みは、アニサキスの幼虫が胃の壁内に入り込むことにより発生するとされていました。そこで、アニサキス症の治療には、胃内視鏡で胃壁内に入り込んだアニサキス幼虫を検出して内視鏡的に摘出することが必要とされていました。しかし最近では、腹痛の原因は、アニサキス幼虫が胃壁を喰うように入り込むことではなく、アニサキス幼虫によるアレルギー反応であるとされています。アニサキス幼虫は人の消化管内では1週間程度しか生きられないため、自然に腹痛は軽快するといいます。

 予防としては、できるだけ新鮮な魚を食べること、加熱調理しない魚を食べないことなどが原則となりますが、そう言っていると魚の刺身は食べられないことになってしまいます。アニサキス幼虫は体長が23cmありますので、それぞれの切り身を食べる前に観察するとアニサキス幼虫を発見できる可能性はあります。薄造りにした刺身はより発見しやすいのかもしれません。

また上述のようにカツオが感染源になるとすると、今までのように背の青い魚を生で食べなければ大丈夫というわけにもいきません。マグロはどうなのかというと、解凍のマグロは安全だと専門家はいいます。冷凍されている間にアニサキス幼虫は死滅するからです。アニサキス幼虫を噛み砕いて死滅させるには、よく噛んで食べることも有効だそうです。最近寿司としてよく食べられるようになったサーモンはほとんどの場合、安全だといいます。なぜなら多くの場合、養殖サーモンが用いられ、養殖では海洋での感染確立が低いのだそうです。