医療あれこれ

痛風の人は認知症になりにくい?
2015年3月14日

 痛風は血液中の尿酸値が高くて、関節包内に結晶となって沈着します。それが原因で急性関節炎を発症すると、関節が痛く、腫れてくるのですが、その痛みが激しいことから風にあたっても痛いというので痛風という名前で呼ばれています。

 最近、この痛風の原因となる尿酸に抗酸化作用のあることが解ってきました(2014629「尿酸には強力な抗酸化作用がある」参照)。抗酸化作用は、酸化ストレスとして、神経細胞が障害されてくる変性疾患を助長することが知られていますが、尿酸の抗酸化作用はこれを抑制するというのです。つまり血液中の尿酸値がある程度存在することにより、酸化ストレスが抑制され、神経細胞の変性が抑制され、これが原因で発症するアルツハイマー型認知症の発症が抑制されることが想定されます。

 この度これについて、米国ハーバード大学から、大規模臨床試験の成績が発表されました。それによると、痛風患者約5万のうち300人が、痛風でない人24万人のうち1940人が新たにアルツハイマー病になったというものでした。これを統計学的に解析すると、痛風になるとアルツハイマー病になるリスクが24%低下することになります。

 今回の結果から考えられることは、血液中の尿酸値が高いと、アルツハイマー病にはなりにくいが、痛風の関節炎を発症してしまいます。逆に尿酸値が低すぎると、抗酸化作用の不足からアルツハイマー病などが発症しやすくなるということを推測させるものです。抗酸化物質としてよく知られているものに例えばビタミンCなどがありますが、これらに比べて尿酸の血中濃度ははるかに高いことから、尿酸値のわずかな変動が抗酸化作用を大きく変化させ、酸化ストレスに影響を与えることが大きいと想像されます。しかし、両方のバランスを考えるとやはり血液中の尿酸値は適切な治療などにより正常範囲を保っておくことが重要だと思います。

引用文献:Na.Lu et al. Ann Rheum Dis (2015.3.4. オンライン版)




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