医療あれこれ

医療機器と携帯電話
2014年7月21日

 ご存知のように、これまで鉄道各社は電車内の「優先座席付近などで携帯電話の電源は終日オフにして下さい」とアナウンスしていたものが、今年の7月以降「混雑時には、電源をお切り下さい」のように、「通話はご遠慮下さい」はそのままですが、電源オフの規制を緩和しています。阪急電鉄では、携帯電話電源オフ車両を撤廃して、他の私鉄同様に「優先座席付近で混雑時には・・・」と変更されています。

pacemaker2.jpg このような公共の場所での携帯電話使用規制は、常時、医療機器を使用している人への影響を考慮したものでした。常時使用する医療機器の代表が写真に示す埋め込み型ペースメーカーです。心臓は、右心房に洞結節という心臓独自の生理的ペースメーカーがあり、その電気的刺激で規則正しく拍動しています。その洞結節のリズムが不調になる洞不全症候群や、刺激が心臓の筋肉に伝導されることが障害される房室ブロックなどの不整脈では、人工ペースメーカーという機器によって心臓のリズムを制御することが必要になるのですが、常時これをおこなうためにペースメーカーを皮膚の下に埋め込んでおくものです。携帯電話など電波を発する電子機器はこの埋め込んだペースメーカーを狂わせる可能性があることから、これまで使用規制があったのでした。

 1997年の厚生省(現在の厚生労働省)指針では、電子機器を22 cm以上近づけると埋め込み型ペースメーカーに影響を及ぼすとしていたことから、電車内での携帯電話使用規制が実施されていました。しかしこれは20年近く前の旧式の携帯電話のことであって、新しい機種になる程この影響が低減され、3 cm以上離せば問題ないという新機種の携帯電話(スマートフォン)も登場しています。そこで今回の規制緩和になったわけですが、混雑時には、ペースメーカー使用者の体と直接接触することもあるので、やはり注意が必要というわけです。

 なお人工ペースメーカーに影響をおよぼす機器は、携帯電話だけではありません。最近の米国から発表された論文でも、MP3などのヘッドホンからも影響が出るとのことで、「埋め込み型医療機器のある胸の上に、他の人がヘッドホンを付けたまま頭をのせるようなことがないように注意してください」と発表者は述べています。


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