医療あれこれ

難聴に対して人工内耳装着
2014年1月10日

 歳をとると次第に聴力が落ちてきます。高齢者の難聴は、高音域の障害から始まるのですが、人の声は比較的低音域のため、初期には人の声が聞くことができて、難聴が起こりかけている事に気付かないことが多いのです。そのうち低音域の障害も加わってくるので人の声も聞き取りにくくなってきます。

 この高齢者難聴の原因は、内耳にある蝸牛(うずまき管)内の感覚細胞が次第に脱落してくることによるものです。一たん感覚細胞がなくなってしまうと、二度と自然に再生してくることはなく、現在の医学では治療することはできません。従って難聴になってしまった高齢者は補聴器を使用して人の声や音を聞くことが必要になってくるのです。

 最近、これまでの補聴器とは異なり、「人工内耳」と呼ばれる医療用装具が注目されています。ふつうの補聴器は耳に装着しておいて聞いている音を増幅させ鼓膜を振動させることによって聞き取るものですが、この人工内耳は鼓膜を使わないで直接、内耳の蝸牛を刺激して音を感じる装置です。このため高齢者の難聴だけではなく、生まれながら聴力障害のある子供にも用いることができます。

 人工内耳を装着するためには耳鼻科での手術が必要なうえ、高額医療となることから、日本ではあまり普及しておらず、手術件数は約6000件しかありませんが、海外では32万件の手術例があるそうです。子供の難聴はともかくとして、高齢者では「もう歳なんだから手術をしてまでも・・・」と手術を断る場合も多いそうです。このような治療法がもっと手軽に受けられるようになることが望まれます。

文献:加我君孝:日本医事新報(2014,1)、No.4680P32.




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