医療あれこれ

古代ミイラの3割に動脈硬化があった
2013年3月24日

 動脈硬化は、その発症機序が生活習慣に関係し、現代人の疾患と考えられています。しかし大昔の動脈硬化有病率は知られていませんでした。この度、4000年以上にわたって世界中4つの地域で作られたミイラのCTスキャンを行い、動脈硬化の有病率が調査され報告されました。4つの地域は、古代エジプト、古代ペルー、アメリカ南西部のプエブロ族、そしてアリューシャン列島の狩猟民族です。

 その結果、76人の古代エジプト人のうち29(38%)51人の古代ペルー人のうち13人(25%)、5人のプエブロ族のうち2人(40%)、さらに5人のアリューシャン民族のうち3人(60%)に動脈硬化病変が認められたのです。調べられたミイラの合計137人中47人に動脈硬化があったことになり、約3割にあたります。さらに年齢が高くなるほど動脈硬化が多くなり、高齢で死亡した人ほど有意に動脈硬化を持っていたことが統計学的に明らかにされました。

 今回の研究対象となったミイラはそれぞれ現代文明化社会以前の一般的集団であったことから、「動脈硬化は現代人の生活習慣に関連した特有の病態と考えられていたが、実はそうではなかった。」と論文の著者は述べています。

 しかし、古代人も魚や肉を食べ、エジプト人などはビールやワインも飲んでいたということですから、かならずしも今回対象のミイラとなった人は現代と比べて質素な生活をしていたわけではないかも知れません。しかも特にミイラにされる人は身分の高い人だったと想像されますので、現代の一般人よりはるかに優雅な食生活をしていたのでしょう。

 また、動脈硬化があり、それに加えて乱れた生活習慣をしていると、脳梗塞や心筋梗塞などの死に至る可能性がある疾患につながります。ですから今回の報告が不健康な生活習慣には大きなリスクがあることを否定しているのではなく、やはり正しい生活習慣を守ることが必要であることに変わりはないと思います。

(文献:Thomposon RC et al.  The Lancet Early Online Publication 11, March 2013.




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