医療あれこれ

太りすぎも痩せすぎもガンになる

 肥満をしめすBMIBody Mass Index)という指標があるのはご存じのことと思います。体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で計算され、標準体重はBMI 22とされています。このBMIでみた肥満の人とやせた人をグループ分けしてガンで死亡するリスクを調べた大規模疫学研究があります。

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 グラフで明らかな様に、赤の棒グラフで示す女性ではBMIでみて極端な肥満で無い限りガン死亡リスクとの関係は無いようです。一方青の棒グラフで示す男性の場合、BMI 21以下のやせた人、およびBMI 30以上で肥満の人では統計的にガン死亡リスクが高くなることが示され「U」字型の傾向が見られます。

 この理由として肥満については以前にもこの項でご紹介しましたが(2013515日医療あれこれ参照)、肥満は糖尿病につながり、インスリン様成長因子が細胞の増殖を促し、ガン細胞増殖からガン発症につながっていくことが理解できます。

 一方、やせがガンリスクを高める原因は、低栄養が免疫機能を低下させ、体のガン細胞への抵抗性が低下しているなどの理由が推察されています。ただしガンが発症してしまうと体重が減ってくるので、これが統計結果に影響しているのではないかという疑問が生じますが、初期のガン症例を除外してデータ処理しても同様の結果が得られるということです。また喫煙はガン発症リスクを高めますが、喫煙者ではやせた人が多いということもありますので、非喫煙者だけを対象として解析してもほぼ同じ結果が得られるそうです。

 太りすぎ、やせすぎを抑止し、体重を適切にコントロールすることがガン予防につながるということでしょう。


文献: 津金昌一郎 Astellas Square、2014年4~5月号、P.14