医療あれこれ

定期的な体のチェックが大切

 英国のガン患者は4人のうち1人が、症状が悪化してから救急で病院に運ばれ、そこで初めてガンと診断され、大半の人が数週間以内に死亡しているという調査結果を研究機関がまとめた、と英国の新聞タイムズ誌が報じたそうです。この調査は2006年~2008年のガン患者約75万人について、どのようにガンの診断を受けたか、さかのぼって調べたものです。特に高齢の人では、このように救急で初めてガンと診断されたケースが全体の3分の1を占めているとのことです。

 この調査結果は、日本では考えられない全く驚くべきものです。日本では定期健康診断が一般に行われており、これによって何らかの異常が検出されて、精密検査をすると「ガンが発見された」となります。しかし英国ではこのような健康診断の制度が一般に広がっていないそうで、またイギリス人の多くは、医療機関を受診したがらないことも一つの原因だとのことです。英国の医療制度では、患者さんが専門病院を直接受診することはできず、その病院に登録している家庭医(かかりつけ医)が紹介するのが原則になっているようです。日本では、ある人が何らかの体調変化を感じたとき、かかりつけ医がいれば、そのことを話して何らかの検査を受けることもできます。

 こう申し上げますと、「日本ではガンに対して常に早期発見・早期治療ができている」と思われるかも知れません。それでは、毎年かかさず定期健康診断を受診していたら、あるいは家庭医が細心の注意を払って定期的にガンの検査を行っていたら、ガンが進行してしまった状態で診断されることは絶対ないのでしょうか。残念ながら健康診断の疾患発見率は100%とはならず、一部の健康診断受診者ではガンが発見されないことも可能性としてはあります。しかし定期健康診断を受診していれば、少なくとも英国のように救急搬送されるほど症状が悪化して初めてガンが発見されることはないでしょう。また、もしそのような事があったとしても、その発生率は少なくとも英国のように4人に1人というほど高率ではないと言うことができます。

 生きている人間の体のことですから「完全に、完璧に」は不可能ですが、ガンの早期発見という点では、健康診断の受診など「できる範囲内で」定期的に体のチェックをしておくことが、後になって後悔しない唯一の手段ではないでしょうか。