医療あれこれ

激しい運動は中年男性によくない?

 これまでの研究で、激しい運動をする人は心臓の冠動脈の硬化が高い傾向にあり、中年アスリートには激しい運動は心臓によくないと考えられていました。しかし冠動脈硬化度と死亡率の関係は明らかではなく詳細については不明な部分も多い状態でした。

 このほど中年期の男性が激しい運動を行っても心臓に悪影響はないことがアメリカ・テキサス・ヘルス・プレズビテリアン病院付属運動・環境生理学研究所のBenjamin Levine氏らによる研究で示され公表されました。

JAMA Cardiol. 2019;4(2):174-181. doi:10.1001/jamacardio.2018.4628

 研究の対象は、19982013年に4080歳だった21,758人(平均年齢51.7歳)の健康な男性です。これらの対象者のほとんどがランナーで、自転車競技や水泳、ボート競技、トライアスロンの選手も含まれていました。激しい運動の定義は、ジョギング、サイクリング、バスケットボールやテニスなどの運動を週に8時間以上とされました。研究者によるとこれらの運動はレクリエーションとして楽しむレベルではなく、競技レベルに相当するものだそうです。

 対象とした男性アスリートを冠動脈硬化度の程度で高スコア群と低スコア群の2群に分け、身体活動レベルに基づいて比較検討しました。平均で10.4年間追跡した結果、激しい運動を行う男性は、身体活動レベルが低い男性に比べて冠動脈硬化度が高く、スコアが低く激しい運動を行う男性群では、スコアが同程度で身体活動レベルが低い男性群と比べて死亡リスクが半減したことが分かったそうです。また、スコアが低く激しい運動を行う男性群では、心臓病で死亡するリスクも61%低かったという結果でした。さらに、スコアが高い男性においても、激しい運動を行うアスリートでは、身体活動レベルが低い男性と比べて統計学的な有意差はないものの死亡リスクが約23%低いことが示されました。

 これらの結果から、研究者は、「動脈硬化が進んでいない中年男性ではハイレベルなアスリートであることは明らかに心臓に保護的な作用があり、有害ではないようだ」としており、さらに今回検討したほどの激しい運動を行う必要はないが、生涯にわたって有意義な運動を続けることが重要だ」と話しています。