医療あれこれ

肥満の人は脳梗塞になりやすい

 太っている人は脳の血管が閉塞して脳梗塞を起こしやすいと思われますが、このほど国立がん研究センターなどの調査研究機関により構成された多目的コホート(JPHC)研究グループの大規模検討により、肥満度と種類別の脳梗塞発症の関係が明らかにされました。

 研究調査対象とされたのは、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9保健所のデータで、1990年、1993年に40~69歳の男女約9万人を対象として2011年まで追跡調査がおこなわれました。

 肥満度はBMI(body mass index) = 体重(kg)÷身長(m)÷身長()を用い、年齢による変化を考慮に入れ、累積平均BMIを算出して検討の対象データとしました。BMIの正常範囲は健常人は19から25未満ですが、25以上なら肥満、30を超えると超肥満とされています。

また脳梗塞は、脳血管自体に血栓が形成されて発症する「アテローム血栓性脳梗塞」、梗塞の範囲が1cm未満の小さな脳梗塞である「ラクナ梗塞」、および不整脈などの心疾患が原因で発症する「心原性脳塞栓」の3病型に分けて検討しました。

 その結果、男性ではBMI19未満ではラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞の発症リスクがそれぞれ38%, 68%低く、BMI25以上27未満および30以上では心原性脳塞栓の発症リスクがそれぞれ27%, 114%高いことが判りました。女性ではBMI 23以上で25 未満の基準グループに比べて、BMI21以上23未満 ではラクナ梗塞発症リスクが26%低く、27以上30未満で40%ラクナ梗塞発症リスクが高く、さらに30以上はラクナ梗塞発症リスクが77%、アテローム血栓性脳梗塞の発症リスクが90%、心原性脳塞栓の発症リスクが89%高くなりました。

 今後の検討課題として、血圧、血糖、脂質などの異常との関係をさらに詳しく調べる必要があることなどがあります。しかしこれまで概念的に肥満は良くないということが日本人のデータとして明らかにされたことには意義があると思います。

 

引用文献:J Epidemiol. 2018 Dec 15. doi: 10.2188/jea.JE20170298. [Epub ahead of print]