医療あれこれ

意外に多い仮面高血圧

 高血圧で血圧を下げるお薬(降圧薬)を服用して頂いている方はかなりいます。高血圧自体で頭痛などの自覚症状はないのですが、いうまでもなく高血圧を放置すると血管の壁が次第に障害されてきて、脳梗塞や脳出血、心筋梗塞や腎障害を引き起こしてきます。これを抑止するのが高血圧治療の目的で、ほとんどのお薬を服用している方はこのことをよく理解して頂いていると思います。 

 ところで、血圧というものはさまざまな環境でよく変動することはご存知でしょう。家庭で血圧を測定するとそんなに高くないのに、診療所では血圧測定の結果が高く出ることがよくあります。この一つ原因が、診療所では医療者が白衣を着ているため、この雰囲気が影響して血圧が高くなるのでこういった血圧の変動を「白衣高血圧」といいます。逆に診療所で血圧測定をすると高くないのに家庭では血圧が高いということもあり、これは診療所での診療において高血圧がマスクされてしまっていることから「仮面高血圧」と言われています。このように診療所で血圧を測定するだけでは真の血圧の状態が把握しきれないこともあって、高血圧治療において家庭で血圧を測定することをおすすめしているわけです。

 ところで最近の論文で、診察室で正常血圧を示すアメリカ人成人の8人中1人は仮面高血圧と考えられると、アメリカの研究グループが論文を発表しました。(Am J Epidemiol 2017118日号オンライン版)に発表しました。

ニューヨーク市中心部に勤務する成人の診察室血圧と家庭血圧の差を調べた200512年の仮面高血圧811例の追跡調査と、200510年の米国民保健栄養調査(9,316)のデータを統合して診察室血圧が正常で脳卒中の経歴がなく、降圧薬を服用していないアメリカ人成人13,900万人における仮面高血圧の有病率を推定しました。

その結果、診察室血圧正常のアメリカ人成人の200510年の推定仮面高血圧有病率は12.3%(約8人に1人)で、21歳以上の1,710万人が仮面高血圧患者と考えられたそうです。さらに仮面高血圧は高齢者、男性、高血圧前症、糖尿病患者に多く見られたということがわかりました。

 やはり血圧は診療所で測定するだけでなく、できれば家庭で測定することが必要なのでしょう。