医療あれこれ

糖尿病に対する外科治療の効果

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 食物のカロリー摂取が過量になって血糖値が上昇することが糖尿病発症の一要因となります。そこで外科手術で胃を切除してしまうとこのカロリー摂取が抑制され糖尿病が改善することが以前より報告されていました。胃切除術の方法としては、右図のように、胃の一部を切除してしまうと残った胃は袖状になることから袖状胃切除術といわれる方法、および胃を全部切除して食道と小腸を直接つなぐRoux-en-Y法があります。

 今回、米国の研究者らが報告したのは、通常の治療ではコントロールが不十分な糖尿病患者さんを①強化薬物療法単独、②強化薬物療法とRoux-en-Y法による胃全的術を併用、③強化薬物療法と袖状胃切除術を併用、の3群に分けて、5年間追跡調査した結果の解析です。それによると5年後の糖尿病治療達成率は手術をしなかった①群では5%だったのに対して、胃全摘出をした②群では29%、胃の一部を切除した③群でも23%と、手術を施行した群では統計学的に有意に糖尿病の状態が改善したというものでした。さらに手術群では薬物治療を中止しても良好な血糖コントロールが維持されていたものもあったと報告しています。

 これまでも、この糖尿病に対する手術療法は有効であったとする報告がありましたが、1~3年の経過観察で、今回のように5年間という長期間経過観察したものはありませんでした。研究報告者らは、「糖尿病コントロールが不十分な症例に対する今回の手術成績は衝撃的だ」と述べています。一方で「これらの良好な治療成績を達成するためには、糖尿病罹患期間が短い間に、早期治療することも重要だ」とも指摘しています。

 糖尿病のコントロール不良が持続すると、いうまでもなく、重大な合併症を引き起こしますから、これらの手術療法を用いてでも十分に治療することが重要でしょう。ただ手術そのものの合併症も考慮にいれていくことが必要です。

 

文献: Schauer P.R. et al: New Ingrand Journal of Medicine (2017) 376; 641-651.