医療あれこれ

冬は一酸化炭素中毒にご注意

 一酸化炭素(CO)は大気中の汚染物質であることから人に対しては中毒物質で、地球温暖化などの環境悪化により大気中濃度上昇という地球全体の汚染が懸念されます。少し前まで自動車の排気ガスによる汚染が大問題でしたが、CO規制強化により次第に濃度は低下しているそうです。しかし冬場になると様々な問題が発生してきます。東京消防庁の統計におけるCO中毒の月別発生件数をみると、一年のうち1月と12月をあわせて全体の約60%を占めています。冬場にCO中毒発生が多い原因は言うまでもなくストーブ、ファンヒーターなど暖房施設の利用が集中してくるからです。また規制により低下しているはずの自動車排気ガスも、雪に埋もれて自動車のマフラーが詰まり不完全燃焼からCO発生が増加するといった要因も考えられます。

 COがどのような機序で人体に中毒症状を引き起こしてくるかというと、血液中のヘモグロビンとの親和性が主な要因となります。肺から体内に取り込まれた酸素が血液中でヘモグロビンによって全身に運搬され生命活動に利用されます。COは酸素と比べてヘモグロビンとの親和性が200倍以上高く、吸い込んだ空気中にわずか(0.1%)でも存在すると酸素より高度にヘモグロビンを占拠してしまうことから全身への酸素運搬が阻害されるのです。その結果、全身の酸素欠乏により心臓や脳をはじめ各臓器の機能障害がおこります。低濃度のCOであっても長時間吸入し続けると、高濃度CO吸入時のように自覚症状がないまま悪化し、症状出現時には突然意識障害が発生するなど重篤な状態に陥ることもあります。

 COは無色、無味、無臭の気体です。中毒予防のための身近な対策として、暖房設備の使用中は換気扇をつけることや定時的に窓を開けるなどの対策により換気に十分気を付けることがあります。また火器設備・器具の使用方法を守り点検や清掃に心がけ、もし可能ならCOを検知する警報器を設置することも勧められています。

(引用:医療情報MR.com QOL:Select 2019.10.31