医療あれこれ

心理的フレイルも将来の要介護につながる

 フレイルとは以前にご紹介したように(医療あれこれ2017.11.19)脳血管疾患や転倒による骨折など急性のクシデントがないにもかかわらず、75歳を超えると加齢による身体の衰弱が増加して筋力低下が低下し外出回数が減少するなど日常活動量が少なくなり、さらにはこれらが関連して認知機能の低下まで引き起こしてくる状態をいいます。このときはフレイルといわれるものすべてについてみると、要介護状態になる確率が通常より2.4倍高いという調査結果のご紹介でした。今回は、このフレイルのうち身体的フレイルだけではなく心理的フレイルについても要介護状態になりやすいという話題です。

 身体的フレイルは体の変化ですから、フレイルという状態に陥ると将来介護が必要となることは容易に推測され、事実こうした報告が多数みられます。しかしよく調査してみると身体的フレイルだけでなく心理的フレイルについても要介護状態と関連性が強いことがわかったのです。この報告をしたのは国立長寿医療研究センター老年学・社会科学研究センターの研究チームで、地元の65歳以上の住民4千人余りを対象として調査されました。身体的フレイルと異なり心理的フレイルでは、高齢者に多くなる認知症や抑うつ状態、また脳卒中の経歴が大きく影響することから、これらの経歴がない人が選ばれています。この結果は「Journal of Clinical Medicine」に927日(J. Clin. Med. 2019, 8(10), 1554; https://doi.org/10.3390/jcm8101554)に掲載されています。

結果として、フレイルの状態を男女で比較すると、身体的フレイルは男性より女性の方に危険度が統計的に有意に高いのに対して、心理的フレイルはこのような男女差はみられませんでした。年齢の影響では、身体的フレイル、心理的フレイルとも年齢が高くなるにつれて増加する傾向が認められました。心理的フレイルの要因として、生活習慣や社会生活などとの関連が調査されましたが、野外の作業、ガーデニング、カルチャーレッスンなどを受けていない状態にあることが明らかになりました。自宅にいるのではなく外出することは、ひいては身体的な活動性を高め身体的フレイルの予防に関連することになるのかも知れません。心身共に健康であることが大切ですね。