医療あれこれ

ナイチンゲール症候群

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 ナイチンゲール症候群は、傷病者の看護を担当する医療職(看護師など)が、傷病者に対して恋愛感情や性的感情を抱く状況をいいます。ナイチンゲールはいうまでもなく19世紀に活躍した看護師のフローレンス・ナイチンゲールですが(201757日付医療あれこれ参照)、ナイチンゲール自身にこのような傷病者と関わりがあった事実があるのではなく、著名な看護師の一人としてナイチンゲールという名前がつかわれています。看護師はその医療業務において傷病者と最も密接に関わりをもつ職務を果たす必要がある医療職種の一つですが、その関係の中で尽くせば尽くすほど傷病者に対しての特別な感情が形成されてしまうのでしょう。

若い女性がアイドル芸能人に対して熱をあげたりすることとよく似ています。この感情はお互いに抱かれるものではなく、ファンがアイドルに対して一方的に抱くものです。そのため患者の傷病が癒えた時には自然に熱は冷め、特別な感情はみられなくなるというのが一般的で、これが長期間持続して当人同士が結婚することになるのはまれだと言われます。

ナイチンゲール症候群が登場する映画で有名なものに、1985年大ヒットSF作品スピルバーグの「バック・トゥー・ザ・フューチャー」があります。高校生マーティは友人の科学者ドクの開発したタイムマシンの実験中に30年前にタイムスリップ。そこで未来の母(ロレイン)と出会うのですが、ロレインの父親が運転する車にはねられ気を失ったマーティを自宅で看病するうちに未来の自分の息子に恋してしまうのです。

マーティ「ママは車にはねられた僕に同情して・・・」

ドク  「どうやら君のママは君にイカれたようだ。看護婦が患者に恋するナイチンゲール症候群だ」

というセリフがありました。

なお手厚い看護を受けた患者が医療職を好きになるという逆ナイチンゲール症候群もありますが、これは心理学者のフロイトがいう転移性恋愛という別ものだそうです。