医療あれこれ

線維筋痛症

 先日この項でリウマチ性多発筋痛症(PMR)をご紹介しましたが、今回これと同様で発症機序がことなる線維筋痛症をご紹介します。線維筋痛症は関節、筋肉、腱などに慢性の痛みが生じる病気で、発症年齢が11歳~84歳と幅広く平均年齢は約44歳と、PMRに比べてやや若い傾向にあり、中年以降の女性に多いことが特徴です。最近注目されてきた疾患ですが、日本における患者数は約200万人と推計されており決してまれなものではないと考えられています。原因は不明で、遺伝性などは明らかではありませんが、最近、精神的ストレスなどが発症の要因と考えられています。

 症状は全身にまたがる体の痛みで、こわばりもみられます。朝、症状が強く夕方になるにつれて症状が軽くなるといった日内変動が見られます。睡眠不足や精神的ストレスが悪化要因で、天候などによっても症状が左右されます。この痛み症状に伴って、全身の疲労感、微熱、手の腫れ、頭痛、動悸、呼吸困難感、腹痛、下痢や便秘、抑うつ、意識障害など様々なものがみられます。

診断のために、関節リウマチのように血液検査でのリウマチ反応など特別なものはなく、X線写真などの画像検査でも診断はできません。アメリカリウマチ学会が診断のための基準を設けています。それによると、痛み症状が3か月以上続くことと、首、鎖骨、肩甲骨、腕、腰部など特別な部位18ヶ所のうち11ヶ所以上に圧痛点を確認することが診断基準になります。

治療ですが、この病気は原因不明で根本的な治療はありませんが、多くの薬物療法などが試みられています。主要な薬剤は抗うつ薬と抗てんかん薬がしばしば用いられます。一方、消炎鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬)や副腎皮質ステロイドはあまり効果がありません。非薬物療法としてマッサージやリラクゼーションなども行われていますが効果は限定的です。

病気の経過は、上述のようになかなか完全に治ることはありませんが、重症の合併症がない限りこの病気だけが原因で死亡に至ることはないとされています。長期にわたる周囲の支援が必要でNPOの患者団体や学術活動を推進する線維筋痛症学会なども組織されています。