医療あれこれ

緑茶が認知症を予防する?

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 近年、アルツハイマー病などの認知症発症は生活習慣の乱れと関連することが判ってきました。一方で、緑茶は高血圧や脳卒中を予防することや、動物実験では記憶障害の進行を阻止することなどが報告されていました。そして植物成分のポリフェノールやカフェインを豊富に含む緑茶やコーヒーが神経保護作用を持つことが判っていました。しかし人において緑茶と認知症の関係を系統的に検討した研究は十分ではありませんでした。

 この度、本年68日~10日に金沢で開催された第58回日本老年医学会で、金沢大学神経内科の山田正仁教授から「緑茶の摂取習慣が将来の認知症発症リスクを低下させる」ことが報告されました。

(山田正仁:食品関連因子による認知症予防・治療法の開発、Aging Science Forum2016、金沢)

 研究は60歳以上で認知機能正常の人723人を対象として、緑茶や紅茶、コーヒーを飲む習慣のある人とない人で認知機能低下がどのように変化するかを5年間にわたって調べたものです。その結果、コーヒーや紅茶を毎日飲む習慣のある人では認知機能低下つまり認知症もしくは軽度認知障害の発症に影響を与えませんでしたが、一方緑茶を毎日飲む習慣のある人の群では、統計的に有意な認知機能低下抑制効果が認められたのです。

 さらに試験管内の反応で、緑茶に含まれるポリフェノールが、アルツハイマー病発症と関連するアミロイドβタンパクの変性を抑制し細胞毒性が軽減されるなどのこれまでの報告が紹介されました。これらのことから、天然フェノール化合物から関連物質を抽出し、安全性などを確認の後、軽度アルツハイマー病患者を対象とした臨床研究が進められているそうです。