医療あれこれ

モーツァルトの楽曲を聴くと頭がよくなる?

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 モーツァルトが作曲した楽曲を聴いていると頭がよくなるという、いわゆる「モーツァルト効果」ということが以前より主張されています。1993年に米国の心理学者が学術科学雑誌ネイチャーに発表した研究成果で、「学生にモーツァルトを聴かせるとその直後におこなった知能検査で、何も音楽を聴かせなかった学生に比べてよい成績が得られた」というのが話の発端です。

 これについてはその当時から広く注目され、この説を支持する論文が多く出され、中にはモーツァルトならよいが、ベートーベンでは効果がなかったなどとするものも現れたり、健康的な心身を作り出すことから、アレルギーなどにも効果があるといった主張までなされました。逆に「モーツァルト効果」などは存在しないと主張する論文も数多く発表され、研究者の間で論争を起こしています。さらにもし「モーツァルト効果」が実在するとなると、これを基にモーツァルト関連のCD販売など産業界も巻き込んだ社会的問題になってしまいした。最終的に結論は出ていないものの最近では「モーツァルト効果」はないと考えられています。

 しかし、モーツァルトを代表とするクラッシック音楽の愛好家からすると、自分の好きなものを聴き心身をリラックスさせると健康増進に少なくとも悪影響はないだろうとは容易に想像されます。気分の変調などを画像的に調べるアイソトープを使った診断法や機能性MRIなどの方法で脳の状態をみることができます。これを用いて診断すると精神的に安楽な、あるいは期待の大きい事柄について考えると脳は活性化することが証明されています。最近では機能性MRIを用いて、「クリスマス精神」を司る脳領域が特定され、クリスマスを祝う被験者はより広い脳領域の活性化が認められたとする論文が発表されています(Hougaard A,et al.Evidence of a Christmas spirit network in the brain: functional MRI study.BMJ. 2015 Dec 16;351:h6266)。

 このような世の中ですが、不必要な心配事をさけて、精神的に安静な状態を保ち、自分の好きなこと、興味あることを楽しむことが脳を活性化して脳の老化を抑止することにつながるかも知れません。